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東京高等裁判所 平成5年(ネ)1076号 判決

控訴人(原告)

鈴木隆夫

ほか一名

被控訴人(被告)

渡辺甲子郎

ほか一名

主文

一  被控訴会社に対する本件控訴を棄却する。

二  原判決中被控訴人渡辺に関する部分を取り消す。

三  被控訴人渡辺は、控訴人らそれぞれに対し、各金七一万六九九九円及びこれに対するいずれも平成二年四月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  控訴人らの被控訴人渡辺に対するその余の請求をいずれも棄却する。

五  控訴費用は、控訴人らと被控訴会社との関係では控訴費用を控訴人らの負担とし、控訴人らと被控訴人渡辺との関係では第一、二審を通じてこれを八分し、その一を被控訴人渡辺の、その余を控訴人らの各負担とする。

六  この判決は、第三項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らは、各自、控訴人隆夫に対し金五七一万九四二九円、控訴人英子に対し金五七一万九四二九円、及びこれらに対する平成二年四月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

4  仮執行の宣言

二  控訴の趣旨に対する被控訴人らの答弁

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり改めるほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二枚目裏九行目から同三枚目表二行目まで(事故の態様)を次のとおり改める。

「衛が被害車を運転して本件道路上を八日市場市上谷中方面から旭市方面に向けて進行中、反対側車線沿道の被控訴会社のガソリンスタンド敷地内から加害車が突然被害車の走行車線上に進入してきたため、衛は急制動の措置を余儀なくされ、その結果、被害車が路上に転倒した。」

二  同三枚目裏八行目から九行目にかけての「衝突事故」を「本件事故」と改める。

三  同四枚目表五行目から同五枚目表九行目までを次のとおり改める。

「(一) 本件事故による衛の損害 九三六万〇〇三一円

(1)  治療関係費 二八七万六九〇六円

衛は、本件事故による傷害の治療のため、平成二年四月一五日から平成三年九月一九日まで、旭中央病院において、通算入院日数九一日、通算通院日数一九四日の治療を受け、その間次の支出を要した。

ア 治療費総額二六九万五五七六円のうち患者負担分 八八万〇〇六〇円

イ 看護料 一二九万〇九二〇円

〈1〉 入院期間中の看護料 四五万五〇〇〇円

衛の入院期間中、傷害が極めて重く、しかも未成年者あつたため、母である控訴人英子をはじめとして家族が付きつ切りで看護に当たつた。その金額は一日当たり五〇〇〇円が相当であり、九一日間では四五万五〇〇〇円となる。

〈2〉 退院後自宅療養中の看護料 八三万五九二〇円

衛は、第一回目の退院の翌日である平成二年六月二五日から同年一〇月三一日までの自宅療養期間中、自宅内でのすべての日常の介護を控訴人英子に依頼した。右期間中の看護費用は、職業的看護補助者の一日当たりの付添基本給(社団法人日本臨床看護家政協会による付添料金)六四八〇円によるのが相当であり、右一二九日間では八三万五九二〇円となる。」

四  同五枚目裏六行目を削除する。

五  同七枚目裏一行目と二行目を次のとおり改める。

「(1) 衛は、平成三年一二月一〇日、本件とは別の交通事故(以下「別件事故」という。)に会い、同月一一日死亡した。」

六  同八枚目表二行目と三行目を次のとおり改める。

「(六) 以上の(一)、(二)の合計額から(四)の金額を控除し、(五)の金額を加えた総損害額は一一一六万〇〇三一円となり、各控訴人の損害額はこの二分の一の五五八万〇〇一五円(小数点以下は切り捨てる。以下同様)となる。」

七  同八枚目裏一行目と二行目を次のとおり改める。

「(一) 請求原因1の(一)ないし(四)及び(六)の事実は認める。同(五)のうち、衛が被害車を運転して本件道路上を八日市場市上谷中方面から旭市方面に向けて進行中、反対側車線沿道の被控訴会社のガソリンスタンド敷地内から加害車が被害車の走行車線上に進入し、その際、被害車が路上に転倒したことは認め、その余の事実は否認する。」

八  同九枚目裏一行目と二行目を次のとおり改める。

「(一) 請求原因1の(一)ないし(四)及び(六)の事実は認める。同(五)のうち、衛が被害車を運転して本件道路上を八日市場市上谷中方面から旭市方面に向けて進行中、反対側車線沿道の被控訴会社のガソリンスタンド敷地内から加害車が被害車の走行車線上に進入し、その際、被害車が路上に転倒したことは認め、その余の事実は否認する。」

第三証拠

証拠関係は、原審及び当審記録中の証拠に関する各目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本件事故の発生、態様及び過失相殺

1  請求原因1の(一)ないし(四)及び(六)の事実並びに(五)のうち、衛が被害車を運転して本件道路上を八日市場市上谷中方面から旭市方面に向けて進行中、反対側車線沿道の被控訴会社のガソリンスタンド敷地内から加害車が被害車の走行車線上に進入し、その際、被害車が路上に転倒したことは各当事者間に争いがない。

2  右争いがない事実に、成立に争いがない甲第七号証の三ないし一四、二三ないし二五、第九号証の一ないし八、乙第四号証、丙第二号証、原審証人石毛のぶ子の証言及び原審における被控訴人渡辺本人尋問の結果を総合すれば、本件事故の状況として、次の事実が認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

(一)  本件事故現場は、八日市場市上谷中方面と旭市方面を東西に結ぶ車道幅員約五・六メートルの舗装された片側一車線のほぼ直線の見通しの良い道路で、本件事故当時、本件事故現場付近の本件道路の制限速度は時速四〇キロメートルであつた。本件事故現場の南側道路沿いに被控訴会社のガソリンスタンドがある。本件事故当時、交通量は少なく、被害車側、加害車側のいずれにおいても見通しを妨げる障害物は存在せず、明るかつたが、雨上がりで路面が濡れており、スリツプしやすかつた。

(二)  被控訴人渡辺は、本件事故当時、右ガソリンスタンドで加害車に給油をし、のぶ子の誘導に従つて車道手前まで進出した上で一旦停止し、左右の安全を確認した上で、旭市方面に向け、右折の処置をとりながら時速約五キロメートルの低速度で発進した。発進と同時に、旭市方面に通じる車線(以下「被害車側車線」という。)上の約一二七メートル先を(なお、甲第七号証の二五の検察官に対する供述調書では、この距離が七〇ないし八〇メートルである旨の供述記載があるが、実況見分の際に指示した位置関係を訂正する程の合理性があるとはいえない。)直進してくる被害車を発見した。しかし、その位置関係から、同車が到達するまでに自車を安全に右折進行させることができるものと判断し、八日市場市方面に通じる車線(以下「反対車線」という。)を斜めに横切つて、前記速度のまま、被害車側車線内に進入し進行を続けた。

(三)  衛は、時速八〇キロメートルを超える程度の速度で被害車側車線を走行し、進行方向右前方のガソリンスタンドからのぶ子が加害車を被害車側車線に出すために誘導しようとしているのを発見したが、自車の通過を待つてから加害車を道路に出すものと考えて、若干速度を落としただけで進行を続けた。

(四)  のぶ子は、加害車の誘導をするため、ガソリンスタンドの本件道路際に立つて左右を注視し、安全を確認したが、進行する車両を発見しなかつたので、進行の合図を出した。加害車が発進して間もなく左方向の約百数十メートル先から、被害車が直進してくるのを発見したが、加害車が発進後であつたため、何ら加害車に対する指示はしなかつた。

(五)  ところが、被害車が、被控訴人渡辺の判断を超えて極めて高速であり、また、被害車側車線内に入つてからの加害車の進行速度が低速に過ぎたため、高速度で進行していた被害車が加害車に急接近し、衝突の危険を感じた衛がこれを回避しようとして、加害車の後方約二〇メートルに迫つた地点で被害車の前後輪を急制動した結果、被害車の速度が高速であつたほか、被害車の後輪が著しく磨耗していたこと、雨後で滑りやすい路面であつたことも加わつて、被害車がスリツプして、被害車は歩道の縁石に当たつて転倒し、衛は路上に投げ出された。

3  右認定事実によれば、本件事故は、加害車が被害車側車線内に進入し被害車と急接近を生じた結果、被害車の運転者である衛が加害車との衝突を回避するために急制動の措置を余儀なくされ、転倒するに至つたものであつて、その原因は、加害車の運転者である被控訴人渡辺において、被害車が被害車側車線を高速度で進行してくるのに、その前方を右折進行できるものと軽信して被害車の進路を妨げ、かつ、被害車側車線内に進入した後も速やかに加害車の速度を上げることなく被害車の前方を進行したために発生したものというべきである。よつて、被控訴人渡辺は本件事故の発生について過失があり、本件事故によつて衛が被つた損害を賠償すべき責任を負うものというべきである。

また、衛は、タイヤの磨耗した被害車を運転して、雨上がりでスリツプしやすい被害車側車線を制限速度の二倍程度の高速度で進行し、かつ、進路前方のガソリンスタンドから加害車が被害車側車線に出ようとしているのを発見しながら、自車を先に通してくれるものと判断して若干速度を落としただけでその動静を十分注意することなく高速度で進行を続けたものであつて、このことが被控訴人渡辺に両車の位置関係、その後の接近の危険の判断に誤りを生じさせ、危険回避に重大な障害となつているもので、本件事故の発生に大きく寄与したものと認められるから、これを被害車側の落度として、本件事故による損害について過失相殺を行うべきである。

右過失の割合は、以上の事実関係に照らすと、被控訴人渡辺が四割、被害者である衛が六割と認めるのが相当である。

4  のぶ子については、前記のとおり、加害車の誘導行為を行つているが、本件事故当時の交通量が少なく、加害車側からの前方左右の見通しにも何ら支障がなかつたことは前示のとおりであつて、のぶ子の誘導がなくても被控訴人渡辺が安全確認をすることは十分可能であつたのであり、現に、加害車を本件道路の被害車側車線に進出させたのは、被控訴人渡辺がのぶ子の発進の合図の後被害車が本件道路の左側から進行してくるのを発見しながら、その距離関係からみてその前方を右折進行できるものと考えて、被控訴人渡辺の判断に基づいてなしたものであること前示のとおりである。しかも、加害車が被害車側車線に進出後、後方から接近してくる被害車の追突を防止するために速やかに速度を上げようとしなかつたのはもつぱら被控訴人渡辺の運転行為と認められるから、のぶ子のした誘導が被控訴人渡辺の判断を誤らしめたものとは認められず、本件事故の発生について原因をなしているものと認められることはできない。

二  被控訴人渡辺の責任原因

右一の認定事実によれば、被控訴人渡辺は加害車を自己のため運行の用に供していたことが認められ(被控訴人渡辺もこの点は特に争つていない)、かつ、同被控訴人には右一で判示したとおり過失が認められるので、自賠法三条ただし書所定の免責事由は存在せず、同被控訴人の抗弁1の免責の主張は理由がない。

よつて、同被控訴人は、自賠法三条により運行供用者として本件事故によつて発生した控訴人らの損害を賠償する責任がある。

三  被控訴会社の責任原因

前記一のとおり、のぶ子のなした誘導が本件事故の原因をなしているとは認められないから、控訴人らの被控訴会社に対する請求はその余の点について判断するまでもなく理由がない。

四  損害

1  治療関係費 二六八万五九八六円

(一)  治療費(患者負担分) 八八万〇〇六〇円

原本の存在と成立に争いがない甲第二号証、成立に争いがない乙第三号証の一ないし一五、原審における控訴人英子本人尋問の結果によれば、衛が、本件事故による傷害の治療のため、平成二年四月一五日から平成三年九月一九日までの間に旭中央病院において、通算入院日数九一日、通算通院日数一九四日の治療を受け、治療費二六九万五五七六円のうち、患者負担分として八八万六〇円を支払つたことが認められる。

(二)  看護料 一一〇万円

原審における控訴人英子本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、衛の入院期間中、傷害が極めて重く、しかも未成年者であつたため、母である控訴人英子をはじめとして家族が付きつ切りで看護に当たつたこと、及び、衛は、第一回目の退院の翌日である平成二年六月二五日から同年一〇月三一日までの自宅療養期間中、自宅内でのすべての日常の介護を控訴人英子に依存したことが認められる。

弁論の全趣旨により原本の存在と成立が認められる甲第一〇号証の一、二の一、弁論の全趣旨により成立が認められる甲第一一号証の一、二並びに弁論の全趣旨によれば、衛の入院期間中の看護料は一日当たり五〇〇〇円が相当であるから、入院期間九一日分では四五万五〇〇〇円となり、また、衛の退院後の自宅療養中の看護料は、職業的看護補助者の一日当たりの付添基本給(社団法人日本臨床看護家政協会による付添料金)は六四八〇円であるが、右は食費等を含むものであり、母親が介護したのであることを考慮するとこの場合も一日五〇〇〇円と認めるのが相当であり、右一二九日間では六四万五〇〇〇円となる。

(三)  通院費 五一万二二一〇円

控訴人らと被控訴人渡辺との間で争いがない。

(四)  入院雑費 一一万八三〇〇円

控訴人らと被控訴人渡辺との間で争いがない。

(五)  諸経費 七万五四一六円

控訴人らと被控訴人渡辺との間で争いがない。

2  逸失利益 二三二万五〇二二円

(一)  衛の前記争いのない後遺障害(請求原因1の(六))の内容によると、右後遺障害による労働能力喪失率は、後遺障害等級一二級の一四パーセントと認められ、衛は、平成三年三月に高等学校を卒業して、同年四月から就職した後の一〇年間は右割合による労働能力を喪失したものと考えられ、この間、高等学校卒業の男子一般の収入が得られたものと考えられ、平成三年四月から平成一三年四月まで、平成二年賃金センサス第一巻第一表、産業計・企業規模計、旧中、新高卒の一八ないし一九歳の男子労働者平均賃金を基礎として年五分の割合による中間利息をホフマン方式により控除すると、その逸失利益は、次のとおり、二三二万五〇二二円となる。

2,174,300×0.14×(8.590-0.952)=2,325,022

(二) 因果関係の中断の主張について

衛が平成三年一二月一一日、別件事故(交通事故)によつて死亡したことは、控訴人らと被控訴人渡辺との間で争いがない。

被控訴人渡辺は、衛が別件事故で死亡した時点で逸失利益の発生が中断する旨主張する。しかし、衛は本件事故に基づく後遺障害により右一四パーセントの労働能力を喪失したことにより、本件事故と相当因果関係のある損害として右逸失利益が生じたものであつて、別件事故による死亡ではこれを除いた残りの労働能力が失われたことになる(損害の補償がされるとすれば残りの労働能力について生じる)のであるから、本件事故後の死亡原因が病死、自殺その他これに類する場合はともかくとして、別の交通事故によつて死亡したとしても右逸失利益の発生が中断するということはできない。同被控訴人の主張は採用できない。

3  慰謝料 三〇〇万円

(一)  衛の入通院及び後遺障害慰謝料 三〇〇万円

本件事故の態様、衛の傷害及び後遺障害の内容、程度、入通院期間、その他諸般の事情を総合考慮すると、衛が本件事故によつて受けた精神的苦痛を慰謝するには、三〇〇万円をもつて相当と認める。

(二)  控訴人ら固有の慰謝料

控訴人らは、手塩にかけて育ててきた長男の衛が、本件事故により、障害者としての一生を送らざるを得なくなつたので、極めて甚大な精神的苦痛を受けたと主張するが、受傷者の近親者が自己の権利として慰謝料請求権を有するのは、当該近親者が死亡した場合に受けるべき精神的苦痛にも比肩すべき場合であるところ、本件においては、前記の程度の後遺傷害が認められるにすぎないから、控訴人らが自己の権利として慰謝料請求権を有するものと認めるには足りないというべきである。

4  過失相殺・損害の填補

(一)  前記一で認定したとおり、本件事故の発生については、衛にも六割の過失が認められるので、被控訴人渡辺の賠償すべき損害額の算定に当たり、これを被害者側の過失として過失相殺をするのが相当である。

(二)  ところで、控訴人らが、治療関係費として自賠責保険から一二〇万円の支払を受けたことは、控訴人らと被控訴人渡辺との間で争いがない。

また、原本の存在と成立に争いがない乙第一号証の一、二によれば、被控訴人渡辺は衛が旭中央病院で受けた治療費総額二六九万五五七六円のうち、一四五万〇六七四円を支払つたことが認められる。

これらは、被控訴人渡辺側からの損害の填補であるから、過失相殺後の損害賠償額から控除すべきであるが、後者については控訴人らがその請求金額から除外していることが明らかであるから、損害賠償額の算定においては、一旦これを右1ないし3の損害額に合算した上で、過失相殺を行うのが相当である。

(三)  以上1ないし3の損害賠償額の合計は八〇一万一〇〇八円であり、これに右(二)のうちの一四五万〇六七四円を合算すると、九四六万一六八二円となり、この金額について、右過失相殺(被控訴人渡辺に対して請求しうるのは四割)をすると、三七八万四六七二円となる。

(四)  この金額から(二)の損害の填補額の合計二六五万〇六七四円を控除すると、残額は一一三万三九九八円となる。

5  衛の死亡と控訴人らの相続

前記四の2の(二)のとおり、衛は、平成三年一二月一一日、別件事故によつて死亡したところ、成立に争いがない甲第六号証及び原審における控訴人英子本人尋問の結果によれば、衛の法定相続人は、父の控訴人隆夫と母の控訴人英子の二名であり、控訴人らは、各二分の一の割合で、衛の被控訴人渡辺に対する右損害賠償請求権を相続したことが認められる。

そうすると、控訴人らが被控訴人渡辺に対して賠償を求めうる損害額は、控訴人各自につき五六万六九九九円となる。

6  弁護士費用 各一五万円

控訴人らが、被控訴人渡辺から前記各損害金の任意の支払を受けられないため、本訴の提起、遂行を控訴人ら控訴代理人に委任したことは当裁判所に明らかであり、本件事案の難易、審理の経過、前記認容金額等に照らすと、控訴人らが被控訴人渡辺に対して本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求めうる弁護士費用は、本件事故発生時からその支払時までの中間利息を控除した上で、各一五万円と認めるのが相当である。

五  結論

よつて、控訴人らの被控訴会社に対する本件控訴は理由がないから棄却すべきであり、被控訴人渡辺に対する控訴人らの請求は、各自、七一万六九九九円及びこれに対する本件事故発生の日である平成二年四月一五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきであるから、これと異なる原判決中被控訴人渡辺に関する部分を取り消し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、九五条、九二条、九三条、八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 川上正俊 松田清 今泉秀和)

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